ライン河はこの地域でその河幅を一層広め、最大1.2kmに達する所もあり、この大河の恵みを十二分に受ける。又、背後のタウヌス(Taunus)山系によって荒々しい北風からも守られ、まれにみる好条件のブドウ畑が生み出され、昔から大銘醸ワインの数々を世に送り出して来た。ドイツにおける最も高級な歴史的ワイン産地がこのラインガウである。
黄土層、粘板質微粒砂土と風化した粘板岩から成る土壌は、リースリングには理想的で完璧なまでに熟成し、洗練された芳香と果実味豊な酸味を持つ最高品質の優雅なワインを生み出す。
栽培面積は、3,000ha。大きさから言うと、全11の栽培地域の8番目にあたり、リースリングの栽培が殆どである。
Johannisberg (ヨハニスベルク)が、唯一つのこの地域のベライヒである。
確かに、陽の光がラインの川面に反射して、太陽の恵みを倍にも生かせるというラインガウの地形の特性を言い表しているが、これはあくまでも川岸から4~500m以内のことであって、それより奥の畑には及ばない。
もっと大切なことは、日中の太陽エネルギーを存分に吸収した河が、ぐっと気温が落ちる夜間から明け方に、徐々にその熱を発散し細かい霧となり、すっぼりとワイン畑を懐にいだき暖めるということにある。ブドウ畑がこの暖かい湿った霧に包まれるということは、又一方で貴腐ぶどうの発生をうながしてくれるのである。
この「貴腐と遅摘み」がヨハニスベルグ城で1775年発見され事と、エーバーバッハ修道院でのカビネット(Cabinet)の語の使用は、ドイツワイン文化にとって画期的な出来事であった。
エーバーバッハでは修道院の幹部会つまり閣議(Cabinet)に供する秘蔵のワインにこの語を使った。