気候はドイツの13のワイン生産地域の中では概して大変暖かい。そのためEUが定めたワイン生産地気象区分の、Bゾーン(フランスのアルザス、サヴォワ、ロワール等と同じ)に唯一属している。
畑は、南北約400kmに渡って細長く続く地域のため、気候、土壌の性格は非常に異なりバーデンワインの特徴を一口に言うのは不可能である。
ベライヒは6つで、北から以下の通り。
この地方は1803年までフランケン地方に属していたことから、現在もワインはボックスボイテル瓶に詰められることが許されている。
ライン河を挟んで、ファルツの東、北をヘツシェ・ベルクシュトラーセに接している。
黄土、粘土質土壌で、主品種はリースリング、ルーレンダー、ヴァイスブルグンダー。酸味の強い、比較的軽いワインを造る。
1751年に造られた約23万ℓの貯蔵可能の大樽でも有名なハイデルベルク城はこの地区にある。
花崗岩、片麻岩の風化土壌。南ないし南西に向いた傾斜面では、素晴らしいフレッシュでエレガントなリースリング種が育つ。他にはフルーティーでブーケの高いルーレンダ一種、スパイシーでこくのあるトラミーナ一種。そして全体の約3分の1を占めるシュペートブルグンダー種で力強い赤ワインを造る。
この赤ワインで、Affentaler(アッフェンターラー)と呼ばれるワインは、猿がしがみついたユーモラスな瓶に詰められている。
また、バーデン・バーデン郊外の
Neuweier(ノイヴアイテー)、
Umweg(ウムヴェーク)、
Varnhalt(ファルンハルト)、
Steinbach(シュタインバッハ)
の4つの村のワインは、フランケン地域のあのボックスボイテル瓶に詰められている。この地の昔の領主がフランケンの領主であった事で、例外的に認められでいる。
ベライヒ・プライスガウと独仏国境にはさまれてある。どちらもワイン栽培は傾斜面で営まれている。この両地区でバーデン・ワインの3分の1を占める。
Kaiserstuhl (カイザーシュトゥール)
は、主に第3紀の火山活動による溶岩の風化土壌。黒色溶岩質だから、太陽熱を充分に吸収する。従って、出来るワインはミネラル分に富んだアルコール度の強い、非常に香り高いものとなる。主品種・シュペートブルグンダーで造るWeissherbst(ヴァイスヘルプスト)が地元の自慢。
ベライヒ・Bodensee (ボーデンゼー)でも造られるが、新鮮でフルーティーなアロマとタンニンの少なさから人気がある。また、シルヴァーナーやグラウブルグンダー種の<白>も香り豊。
Tuniberg 〈 トゥーニベルク 〉
は、黄土の土壌。黄土土壌においては、雨で土砂が流し去られることも頻繁で、その対策としてデラス方式の栽培形態が導入され、大規模な耕地整理が行われた。
*この地区の東端に、
<Württemberg Bodensee>と
<Bayerischer Bodensee>
と言う2つのベライヒがある。
共に、飛び地のベライヒで、前者はヴュルテンベルク、後者はフランケンに属する。
ブドウ畑はネッカー川と、その支流の両岸の斜面にある。ネッカー川流域は森や果樹園、ブドウ畑が広がり、小高い丘には城が、川畔には、街や村が、途切れることなく続いている。
栽培面積は11,300haで、60%が赤ワイン用ブドウ品種。従って、赤ワインの産出量はドイツ一である。この地方独特のトロリンガー(Trollinger)、レンベルガー(Lemberger)と呼ばれる品種が大半で、苦味走った特異な赤ワインを造る。
その他、シュヴァルツ・リースリング(ピノ・ムニエ)、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)も栽培されていて、果実味が豊かで、フレッシュな大衆消費用から上品なデーナーワインまで種類も豊富である。
白ワインの品種としては、リースリング、ミュラー・トゥルガー、ケルナー、シルヴァーナーなどが栽培され、ワインは力強く飲み応えのある味。
また、この地方を特徴付ける、赤と白のぶどうを半々に混醸したロゼワインがある。
シラーワイン(Schiller Wein) と呼ばれている。
この地に生まれた偉大な詩人シラーの名をよせていると言われているが、本当は「いろいろに色が変わるを意味する動詞「SCHILLERN(シレルン-)」に由来するようだ。
この地域のワインは、地元での消費率が高く、入手が難しい。
ベライヒは以下の4つ。
・Kocher-Jagst-Tauber 〈コッハー・ヤークスト・タオバー 〉
・Remstal-Stuttgart 〈レムシュタール・シュトゥットガルト)
・ Oberer Neckar 〈オーベラー・ネッカル 〉
・Württembergisch-Unterland 〈ヴュルテムベルギッシュ・ウンターラント 〉
この土地では、自家製ワインを飲ませる所の印として、軒先に花束のかわりに”箸”〈Besen)を飾っており、そのような造り酒屋を
Besenwirtshaft(ベーゼンヴイルトシャフト)
と呼んでいる。
ワインを注文すると取っ手の付いた大振りのグラスに注いでくれる。ドイツでは一般的に褒めたれた料理に出会うことはそう多くは無いが、この地だけは数少ない例外で、素朴ではあるが味のある料理とワインが愉しめるとワイン通は言う。
名物料理に、ドイツ風手打ちうどんとも言える「Spatzle-シェペッレ」や鍋料理の「Gaisburger Marsch-ガイスブルガー・マルシュ」等がある。
この種の同類の居酒屋を他の地方では、Straußwirtshaft(シュトラウスヴイルトシャフト)と呼んでいるところもある。
カール大帝(742~814)は、葡萄栽培を奨励した王様として、最初に記録に登場する為政者としてよく知られているが、葡萄栽培農民に、国や教会に納めた後の、残りの自家醸造ワインの販売は許可した。その場合、その目印として家の軒先に「Strauß-花輪」を吊り下げることを命じた
大西洋から遠いため、寒暖の差の激しい大陸性気候。ライン西部のモーゼルやライン河沿いの地域とは一線を画す。土壌は、中生代、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀などの石灰岩層がベースである。
この気象と土壌の違いで、ワインの特徴も大きくライン西部とは異なる。
特にモーゼルなどの湿った酸味に対し、乾燥した酸味を感じさせる。品種にしても西部の主要品種は、リースリングだが、フランケンではむしろシルヴァーナの方が適していて、その堂々たる性格を顕著に表わす。
ドイツワインは、一般に女性に例えられるのに対し、フランケンワインだけは常に男性的とされている。 香りは弱いが、コクが強く、引き締まった辛口の土味が特徴で、シルヴァーナの上物はフランスのシャブリの上物に十分対抗しうる。
ブドウ畑は、現在約6,000haに及んでいるが、多くは小農達の零細農園である。従って、農業協同組合が力強い指導力を発揮しているが、旧貴族と修道院に基づく慈善協会によるワイン造りが,今日まで本命を保っている。
うねうねと曲がりくねるマイン川とその支流の流れが、四角形や三角形を作って流れているので、 ビライヒも三角四角の形を名乗っている。この地域は3つのベライヒからなる。
・Steigerwald 〈 シュタイガーヴァルト 〉
・Maindreieck 〈 マインドライエック- 三角地区〉
・Mainviereck 〈 マインフィアエック-四角地区 〉
中流のMaindreieck〈 マインドライエック- 三角地区)には名だたる銘醸地があり、畑は分厚い貝殻石灰岩土壌の上にある。その中心の町・ヴュルツブルクは、有名なブドウ畑「Steinーシュタイン」の故郷。古くからフランケンワインの総称として「シュタインワイン」と呼ばれて来たことは、ここからきている。
酒豪・ゲーテは、このワインを好んで飲んだ。1806年にイエナ市から妻あてに書いた手紙は有名である。「いつもの気に入りのワインがなくなると、私はとても不機嫌になる。他のワインでは口に合わないのだ。どうかもう少しヴュルツブルガーを送っておくれ」と。
ヴュルツブルグのレジデンツ宮殿の真下は、ホーフケラーライ醸造所のケラー(地下蔵)になっており、ドイツでもっとも美しいケラー(地下蔵)の一つと言われている。マイン川を挟んでその対岸には、有名な畑(シュロスベルグとインネレ・ライステ)に囲まれた要塞・マリーエンベルグが眺められる。 ヴュルツブルグは中世の香り高い町々を巡る「ロマンチック街道」の北の出発点でもある。
*フランケンに属するもう一つの、Bayerischer Bodensee〈 バイエリッシャー・ボーデンゼー) と言うベライヒがある。飛び地の小地区で、ボーデン湖の北岸東部にある。(Baden参照)
フランケン地方のブドウ栽培は、古代ローマ人から受け継いだのではなく、アイルランド出身のこのキリアン伝道師に教化され始まった。
「クロスター(修道院)なくしてフランケンはない」と言われる程修道院や教会が数多い。キリスト教のシンボルとしてブドの木や実が、いたる所でよく見かけられることでも、この地のワイン造りに教会・修道院の影響が色濃く残っていることが良くわかる。
古代ローマ時代には、オーデンヴアルト山系の西側山麓に沿って約60kmの街道(今のタリレムシュタットからヴイースロツホにかけて)が走っており、当時ストラータ・モンターナ(山の街道)と名づけられ、重要な交易路であった。
ブドウ畑のある山々の項上にはあちこちに古城が見られ、景観に趣を添える。これらは、この地域にかつて勢力を張った領主が、この通商路を支配する為に設けたものである。このストラータ・モンターナがこの土地にベルクシュトラーセ(山の道)の名を与えたのである。
1971年の新ワイン法発令以来、独立したワイン地域として認められた。西ドイツの13のワイン栽培地域の中で最小の産地、栽培総面積は420haしかない。
一般にワイツは果実香に富み、エレガントだが、ラインガウワインにあるようなビシリとひきしまった酸に欠けることが多く、柔らかい印象を与える。
ベライヒは以下の2つ。
・Umstadt (ウムシュタット)
は、その土壌が斑岩の砕けたものに代表される。場所によって黄土の混合も多い。酒質は軽く、取り上げる程のワインは多くはない。
・Starkenburg (シュタルケンブルク)
は、石灰分の多い、粘土分を少し含んだ黄土や雑色砂岩を有し、リースリング、ミュラー・トゥルガウが主に栽培されている。
ワインは力強く風格がありラインガウに劣らないふくよかな品位を見せる。
現在この地域で醸造され売られるワインの80%は協同組合によるものであるが、それには約500人以上ものワイン農民が参加している。彼等の多くは、俗に、フアイヤーアーペント・ヴインツアー(副業的にワイン栽培を営んでいる人達で、本業が終った後の時間に、ワイン農民として働く人)と称されている。