周辺の景観は、モーゼルを小さくしたような鄙びた可憐な風情を持つ。
赤ワインの生産(70%)が白を上まわる特異な地域。ドイツのワイン生産地の中では、小さい方で栽培地は530haしかない。西ドイツの最北端に位置(北緯50度)する栽培地だが、年平均温度9.5度、年間降雨量650ミリ、平均日照時間1421時間と気象条件には恵まれている。
かつて盛んな火山活動が行われ火山岩系の土質で、赤ワイン用のブドウには微妙な良い効果をもたらしている。
北緯50度圏の赤ワインであるから、明るい色の飲みやすいワインである。白はリースリングで造られ、いいものはシャープな酸味とアロマが生き生きしている。
アールは、風光明媚の人気の観光地。急勾配のブドウ畑をぬって、
「赤ワイン散歩道ーRotweinwanderweg」
が走っている。いたるところに食事とワインを楽しめる店がある。
生産量の少ないこともあって、アールのワインは殆どが地元で消費され、国外ではあまりお目にかかれない。
この地方の葡萄栽培の歴史は古く、2世紀。当時、ローマ帝国の北方の領土であった頃からで、ドイツワイン発祥の地とされるモーゼル川沿いのワイン造りとほぼ同時期に、このアール川畔でもワイン造りが始められたようである。
零細農民によって殆どのブドウ園が営まれてきた。そのため、農民組合組織が発達し、ドイツ13のブドウ栽培地域の中だけでなく、世界で最古の組合組織(1868年創立)が健在である。その農民協同組合の中央醸造所が中流付近のマイショスに在る。
そして、そのやや下流のマリエンタールの修道院跡に、国営醸造所がある。
Walporzheim / Ahrtal
〈ヴァルポルツハイム / アールタール 〉
が、この地域の唯ひとつのベライヒである。
*ワインブック GAULT MILLAUの「Guide to German Wines」の<The leading Producers>の5クラスあるものの中から3クラス以上のものをピック・アップした。
トリーアは、大小のワインケラー、ワインショップ、国立ワイン学校、ワイン博物館などを擁し、盛大なワインフェスティバルが開催される、モーゼルのワインと文化の中心都市である。
2000年の歴史を持ち、ローマの遺跡が点在する。(総合慈善協会は、そのワイン倉にローマ帝国軍団の本部地下倉庫跡を利用している)。
アルプス以北最大のローマの都市で、8万人の人口を誇ったが、再びその数を回復したのはつい最近のことである。
ドイツに最初に司教座が置かれたのもこの地で(皇帝コンスタンティヌス時代)、後世には、強大な権力を持つ領主司教(選定候)がこの地方を治めた。
「資本論」を著したカール・マルクスは、このトリーア生まれである。