この地域のブトウ畑は、ナーエ川とその支流の両岸の急斜面に沿うように作られている。ここは元々火山活動が盛んな一帯で、「貴石街道」と呼ばれる各種の貴石が発掘される街道がナーエ川上流部に走っている。また、支流アルザンツ川の合流地には、アルプス以北の最大の急崖と言われる巨岩の岩山が並んでいる。
中でも「ローデンフェルス」と呼ばれる岩山は特に有名で、人に覆いかぶさるような巨岩が立ち並ぶ。そんな岩肌の猫の額のような所にもブドウ畑が造られている。
このナーエは多種多様の土壌が混在している。だから隣接した畑がそれぞれ異なった土壌であることも珍しいことではない。
北部はロームと砂岩の土壌が多く、そこで造られるワインはデリケートな香りとマイルドな味わいが特徴で、ラインヘッセンワインとよく似た風味である。
南部は粘板岩質の土壌で、モーゼルワインのような芳しい香りとラインガウワインの上品さを併せ持ったワインが誕生している。
ナーエのブドウ栽培も中世前期からの長い歴史を持つが、その名が知られるようになるのは鉄道か引かれた20世紀に入ってからである。
大戦後の最新の醸造技術や販売方法の改善が大きく知名度を上げ世界に通じる道を開いた。
ナーエのワインはドイツワインの魅力を凝縮しているとも言われ、多種多様なワインが造られるから「ドイツワインの試飲小部屋」とも呼ばれる。
比較的にコストパフォーマンスがいい。
品種としてはミュラー・トゥルガウとリースリングが主体で、シルヴァーナーやショイレーベ、ケルナー、バフース、ファーバーなど、多様な土壌に合わせて31種もの品種が栽培されている。
*ワインブック GAULT MILLAUの「Guide to German Wines」の<The leading Producers>の5クラスあるものの中から3クラス以上のものをピック・アップした。
トリーアは、大小のワインケラー、ワインショップ、国立ワイン学校、ワイン博物館などを擁し、盛大なワインフェスティバルが開催される、モーゼルのワインと文化の中心都市である。
2000年の歴史を持ち、ローマの遺跡が点在する。(総合慈善協会は、そのワイン倉にローマ帝国軍団の本部地下倉庫跡を利用している)。
アルプス以北最大のローマの都市で、8万人の人口を誇ったが、再びその数を回復したのはつい最近のことである。
ドイツに最初に司教座が置かれたのもこの地で(皇帝コンスタンティヌス時代)、後世には、強大な権力を持つ領主司教(選定候)がこの地方を治めた。
「資本論」を著したカール・マルクスは、このトリーア生まれである。